第74話 IFRS適用に関する最近の動向①

2011年8月30日

ご存知の方も多いと思いますが、今年の5月と6月にIFRS適用に関して
アメリカと日本で動きがありました。海景君もIFRS適用の動向がきに
なっていたので、一度まとめてみることにしました。

日本におけるIFRS適用に関する動向としては、6月に金融担当大臣の
自見庄三郎が次の2度にわたって2015年3月期からの強制適用はない旨の
発言がありました。

6月21日の会見
6月30日の企業会計審議会総会・企画調整部会の合同会議での冒頭挨拶
6月21日の会見要旨

要旨は金融庁の以下のURLで読むことができます。
http://www.fsa.go.jp/common/conference/danwa/20110621-1.html

国内外の様々な状況の変化があったことから、次の3項目に言及しています。

・6月より企業会計審議会総会・企画調整部会合同会議における議論開始

・2015年3月期からの強制適用はなく、強制適用の決定から
5-7年の準備期間の設定を行う

・2016年3月期で使用終了とされている米国基準での開示の使用期限を撤廃
(引き続き使用可能)

6月30日の冒頭挨拶要旨

こちらも要旨は金融庁の以下のURLで読むことができます。
http://www.fsa.go.jp/singi/singi_kigyou/hatsugen/soukai/20110630.html

IFRS適用に関する部分については次の通りです。

「5月26日にSECからIFRS適用に関するスタッフペーパーが発表されている。
その中では、米国基準の存続が前提とされている。丸のみではなく、
コンバージェンスの方法による例えば5-7年かけての移行など、IFRS全面採用から変化が生じている。」

「インドも、農業会計、金融商品会計を別にするなど、IFRS全面アドプションを
やめている。」

「産業界からも要望書が出されている。」

「連合においても、IFRSを強制適用することに関して、当面見送る方針を早期に明確にするという方針を示している。」

「東日本大震災の復興に向けた足取りを着実なものにする環境整備が求められている。」

「このような内外の情勢の変化を踏まえて、6月21日の会見で新しい方針を発表した。」

「総合的に成熟された議論を早急に開始すること金融庁がなすこと。」

「この審議会でコンバージェンスの方向をしっかり議論していただきたい。」

「税法等の関わり、日本基準の位置づけ、単体開示のあり方を踏まえ、連結先行の考え方も見直さざるを得ないタイミングにきている。」

つまり会見と挨拶の両方を通じての趣旨は
『アメリカをはじめとした外国も全面適用ではなくなっており、その点も踏まえて、IFRSをどのように適用していくかの議論を企業会計審議会で始めるの。』
『日本への強制適用は2015年3月期からということはなく、決定してから準備期間を5-7年設定する。』というものです。

海景君の感想
『2012年に決定したとしても、一番早くても2017年3月ということか。それまでにもいろいろ議論がされるので、結果が見通せなくなってきたということか。』

第73話 最近公表されたIFRSの新基準⑩

2011年8月25日

今回は、IFRS第12号『他の企業に対する持分の開示』について記載します。

まず、最近公表されたIFRSの基準について従来の基準との関係を再度掲載しておきます。

NO89 図1

IFRS第12号『他の企業に対する持分の開示』は開示の基準となります。
この基準の対象となるエンティティは次のとおりです。


● 重要な判断および想定

企業は、エンティティが子会社になるのか、関連会社になるのか、ジョンイントアレンジメントになるのか、非連結のストラクチャード・エンティティになるかを決定する際の重要な判断および想定を開示することが必要です。


● 子会社に対する持分

企業は、子会社の持分について次の情報を開示することが必要です。
(1)  グループの構成

(2)  非支配持分
(重要な非支配持分を有する子会社それぞれの要約財務情報を含む)

(3)  子会社の資産にアクセスするまたは資産を利用する、及び負債を決済する親会社の能力に関する重要な制限

(4)  連結されたストラクチャード・エンティティに対する持分に関連するリスクの性質及びその変動

(5)  報告期間中の支配の喪失を生じる、または支配の喪失を生じない所有持分の変動の影響

(6)  子会社の財務諸表が連結財務諸表と異なる日付または期間である場合


● ジョイント・アレンジメント及び関連会社に対する持分

企業は、ジョイント・アレンジメント及び関連会社に対する持分について次の情報を開示することが必要です。

(1)  ジョイント・アレンジメント及び関連会社に対する持分の性質、範囲、及び
財務上の影響に関する情報

(2)  ジョイント・アレンジメントに対する他の当事者、関連会社に対して持分を
有する他の投資企業との契約上の関係に関する情報も含めて開示

(3)  ジョイント・アレンジメント及び関連会社に対する持分に関するリスクの性質
及びその変動


● 非連結のストラクチャード・エンティティに対する持分

企業は、非連結のストラクチャード・エンティティに対する持分について次の情報を開示することが必要です。

(1)  ストラクチャード・エンティティの性質、目的、サイズ、活動

(2)  ストラクチャード・エンティティの資金調達の方法

(3)  関連する資産及び負債の帳簿価額、当該帳簿価額と持分から生じる損失の最大エクスポージャーとの比較の方法

(4)  契約上の義務はないが、企業が提供した支援及びその理由

海景君の感想

『実際に注記を作成してみないとイメージがわかないが、これまでのより開示が拡大するのは間違いなさそうだ! 』

第72話 最近公表されたIFRSの新基準⑨

2011年8月23日

前回に引き続き、IFRS第11号「ジョイント・アレンジメント」に関して記載します。
ジョイント・アレンジメントに該当した場合に、ジョイント・オペレーションか、ジョイント・ベンチャーかを
判断する際には次の3要素を検討する必要があります。

図1

検討は次の手順で実施されます。

図2

● 法的形式

独立したビークルの法的形式上、独立したビークルがジョイント・アレンジメントの参加者と不可分な場合(ビークルの資産・負債が参加者の資産・負債となる場合)はそのジョイント・アレンジメントは、ジョイント・オペレーションとして
分類される。

例えば、次の場合は、ジョンイント・オペレーションに分類される。

A社とB社は共同でC社を共同で設立した。
その法的な特徴として、A社とB社がC社の資産に対する権利と負債に係る義務を負っている。地域によっては、このような法的形式が必要な場合がある。

● 契約上の取決め

法的形式の検討では、ジョイント・オペレーションに分類されなくても、契約上の取決めによりジョイント・オペレーションに分類される場合がある。

契約上の取決めにより、参加者がジョイント・アレンジメントに対して、資産に対する権利を有し負債に係る義務を負っている場合は、ジョイント・オペレーションとして
分類される。 例えば、次の場合は、ジョンイント・オペレーションに分類される。

A社とB社は共同でC社を共同で設立した。A社とB社はC社の事業に関する株主合意及び共同事業契約を締結している。

共同事業契約によると、A社とB社はC社の権利・義務を議決権保有割合に応じて共有する。事業に関連したすべての支払はA社及びB社への現金支払要求によりまかなわれる。
この場合は、A社とB社がC社の資産に対する権利を有し負債に係る義務を負っていることが明確なためジョイント・オペレーションに分類される。

● その他の事実及び状況

法的形式の検討、契約上の取決め検討では、ジョイント・オペレーションに分類されなくても、その他の事実及び状況により
ジョイント・オペレーションに分類される場合がある。

次の両方の条件が満たされた場合は、ジョイント・オペレーションとして分類される。

(1)  参加者がアレンジメントに関連する資産から生じる実質的にすべての
経済的便益について権利を有している。

(2)  アレンジメントが負債の決済に関して継続的に参加者に依存している。

例えば、次の場合は、ジョンイント・オペレーションに分類される。
設立時のデザインで、アレンジメントの生産物の全てが参加者に販売され、第三者に販売することは制限されている。レンジメントの負債の決済は参加者に販売した代金で決済されている。

海景君の感想
『その他の事実及び状況でジョイント・オペレーションに分類されるケースがでてきそうだ。』

第71話 最近公表されたIFRSの新基準⑧

2011年8月18日

前回に引き続き、IFRS第11号「ジョイント・アレンジメント」に関して記載します。
ジョイント・アレンジメントと分類を記載します。

図1

まず、ジョイント・アレンジメントとして処理すべきかを検討することになります。
ジョイント・アレンジメントとは、共同支配する複数の当事者のアレンジメントのことであり、共同支配とは、関連する活動についての決定に際して、当事者の一致した合意を必要とするものということになります。

この検討で、ジョイント・アレンジメントに該当しない場合は、
以下の基準により会計処理されることになります。

IFRS第10号:連結財務諸表
IAS第28号:関連会社およびジョイントベンチャーに対する投資
IAS第39号:金融商品-認識及び測定
IFRS第9号:金融商品

図2

ジョイント・アレンジメントに該当する場合は、前回も記載しましたが、そのアレンジメントがジョイント・オペレーションに該当するのか、ジョイント・ベンチャーに該当するのかを決定することが必要となります。

図3

ジョイント・オペレーションかジョイント・ベンチャーかの判断には上記の3要素を
検討することになります。

次回は3要素の検討について記載します。

海景君の感想
『まずはジョイント・アレンジメントに該当するかどうかを判断することが必要ということだ。』

第70話 最近公表されたIFRSの新基準⑦

2011年8月16日

今回は、IFRS第11号「ジョイント・アレンジメント」に関して記載します。
最近公表されたIFRSの基準について従来の基準との関係を再度掲載しておきます。

図1

ジョイント・アレンジメントの会計処理の概要です。
IAS第31号とIFRS第11号の両方について記載しています。

図2

従来は、独立のIAS第31号では、独立したビークルかどうかで会計処理を変えていたのですが、IFRS第11号では、独立したビークルであるか否かではなく実質的な状況で判断することになっていることがわかります。

また、IAS第31号では、共同支配企業の会計処理として認められていた
比例連結が認められず持分法になったことも大きな変更点となります。

次回もジョイント・アレンジメントについて記載します。

海景君の感想
『法的事業体であるかが問題ではなくなったのだね。画一的な判断にならなくなって微妙な判断が多くなるということだ。』

第69話 最近公表されたIFRSの新基準⑥

2011年8月11日

前回に引き続き、IFRS第10号「連結財務諸表」に記載されている支配の新たな定義について検討します。

前回も記載しましたが、具体的には次の検討が必要となります。

図1

図1

今回は変動し得るリターンに対するエクスポージャー又は権利の有無の検討から始めます。

変動し得るリターンに対するエクスポージャー又は権利の有無の検討

・リターンとは

図2

図2

上記のリターンは変動にさらされているか、権利はあるかについての検討となります。

パワーをリターンの金額に影響を与えるために使用する能力の有無

パワーがあってもリターンの金額に影響を与えるために使用する能力がなければ支配していることになりません。

今回想定されているケースとしては、投資企業が代理人として行動しているケースだけとなります。

図3

図3

海景君の感想

『代理であれば支配にならないということか。』

第68話 最近公表されたIFRSの新基準⑤

2011年8月9日

前回に引き続き、IFRS第10号「連結財務諸表」に記載されている支配の新たな定義について検討します。

前回も記載しましたが、具体的には次の検討が必要となります。

図1

図1

今回は議決権以外の権利に関する検討から始めます。

関連する活動に対するパワーの有無の検討「議決権以外の権利に関する検討」

検討項目は次の通りです。

・議決権以外の方法で支配されている被投資企業の目的及びデザイン

図2

図2

・関連する活動を指示する実際の能力の証拠

・被投資企業との特別な関係を示唆するもの

図3

図3

・投資企業がリターンの変動性に対するエクスポージャーを有しているのか

海景君の感想

『経営幹部の元企業や設立当初の決め事など議決権以外でもパワーをもっていると考えられる例が多そうだ。』

第67話 最近公表されたIFRSの新基準④

2011年8月4日

前回に引き続き、IFRS第10号「連結財務諸表」に記載されている支配の新たな定義について検討します。 

前回も記載しましたが、具体的には次の検討が必要となります。
NO82 図1

今回は関連する活動に対するパワーの有無の検討から始めます。 

関連する活動に対するパワーの有無の検討「実質的権利のみ検討」

NO82 図2

<関連する活動に関する決定を行う時点で権利行使可能ではない例>
投資会社A社は被投資会社の議決権は全く保有していないが(0%保有)、議決権の過半数を6か月後に受け取る先渡し契約を締結している。
この場合は、現時点では権利行使可能ではないが、決済日が近づくにつれ、権利行使が可能なものと判断されるようになる。 

実体的権利か否かを判定する際には以下の項目などを考慮する必要がある。
・金銭的制裁、インセンティブ
・行使価格
・権利行使の可能性を低くする契約条件
・権利行使のための複数の当事者の合意
・権利行使により便益の享受 

関連する活動に対するパワーの有無の検討「議決権に関する検討」

NO82 図3

検討のポイントとなりそうなケースは以下の通り。

①  潜在的議決権を考慮すれば過半数を超えるが実体的でないケース
この場合はパワーを有していると判定 

②  議決権は過半数に満たないが相対的な割合が高く、他の株主の議決権は分散しているケース
例:
P社はS社の議決権の48%を保有、他の株主は1%以下
この場合はP社はS社に対してパワーを有していると判定

③  議決権は過半数に満たないが相対的な割合が高く、他の株主の議決権は分散していないケース
例:
P社はS社の議決権の48%を保有、他2社がそれぞれ26%を保有、他の株主は1%以下
この場合は他2社の合意だけでP社の支配を妨げることができるため、P社はS社に対してパワーを有していないと判定

 ④  議決権は過半数に満たないが相対的な割合が高く、他の株主の議決権の分散度合は②と③の中間のケース
例:
P社はS社の議決権の48%を保有、他3社がそれぞれ8%を保有、他の株主は1%以下
この場合、過去の株主総会の投票パターンを分析し、パワーを有するか判定

 議決権が過半数でない場合、例えば、30%程度でも相対的な割合が高く、他の株主の議決権が分散している場合(圧倒的な筆頭株主のケース)はパワーを有していると考えらます。

 次回は、議決権以外の権利に関する検討から始めます。

 海景君の感想
『30%程度の議決権でも圧倒的な筆頭株主ならパワーを有していると考えられるんだ。』

 

第66話 最近公表されたIFRSの新基準③

2011年8月2日

前回に引き続き、IFRS第10号「連結財務諸表」に記載されている支配の新たな定義について検討します。
前回も記載しましたが、支配とは次の3つの要素をすべて保持していると認められる場合に、投資企業は被投資企業を支配していることになります。

NO81 図1

具体的には次の検討が必要となります。

NO81 図2

被投資企業の識別
被投資企業は法的事業体に限りません。法的事業体の特定の資産・負債にだけを独立事業体として取り扱い、被投資企業として識別することもあります。この独立事業体はサイロと表現しています。

 被投資企業の関連する活動の識別
被投資企業の関連する活動とは、被投資企業の活動のうち、リターンに重要な影響を及ぼすものです。
問題となりそうなケースは複数の企業が別々の活動を指示する能力がある場合です。
例えば以下のケースです。

NO81 図3

被投資企業には製品開発と製造・販売という二つの主たる活動があり、製品開発は投資企業A社が指示し、製造・販売活動は、投資会社B社が指示している。 
この場合、製品開発活動と製造・販売活動のどちらが被投資会社のリターンに最も影響を与える活動かを検討し、最も影響を与える活動を指示する能力がある投資会社が被投資会社を支配していることになります。 
次回は、関連する活動に対するパワーの有無の検討から始めます。 

海景君の感想
『合弁会社の場合には簡単には決められそうにないな。』

第65話 最近公表されたIFRSの新基準②

2011年7月28日

5月12日にIASB(国際会計基準審議会)からIFRS第10号「連結財務諸表」が公表されました。これは前回記載したとおり、従来のIAS第27号「連結及び個別財務諸表」の連結財務諸表の作成に関する規定を変更し、新たな基準としたものです。

 今回からはIFRS第10号「連結財務諸表」について記載します。 

IFRS第10号「連結財務諸表」では支配を新たに定義しています。
投資企業が被投資企業を支配しているかどうかを判断するための要素として次の3つの要素が挙げられています。
投資企業がこの3つの要素すべてを保持していると認められる場合に、投資企業は被投資企業を支配していることになります。
NO80 図1

①  被支配企業に対するパワー
②  被支配企業への関与から変動し得るリターンに対するエクスポージャー又は権利
③  被支配企業に対するパワーをリターンの金額に影響を与えるために使用する能力

 簡単に表現すると
「被投資企業の活動に対して指示を出すパワーがあり、被投資企業からの変動するリターンへの権利があり、パワーにリターンの金額に影響を与える能力がある場合に投資企業は被投資企業を支配する」
ということになります。
最初二つの「パワー」と「リターン」をつなぎ合わせるのが最後の「パワーをリターンに影響与える能力」ということになります。

NO80 図2

次回から詳細に検討していきます。

海景君の感想
『3つの要素だけ見ても、まだどこまでが連結対象になるかわからないな。』