2014年1月からジャカルタ中心部のMRT地下鉄工事が本格的に始まりました。目抜き通りの街路樹が伐採され代わりに資材置き場のためにシートフェンスで囲いが設置されました。5~6年後の開通を目指しているとのことですが、このMRTが慢性的な交通渋滞を少しでも解消してくれることを願っています。
この他にも、工業団地から港湾へ向けて高速道路を拡張したり、地方都市道路の舗装化を進めるなど、「交通インフラ」整備へ力を入れて経済発展を下支えしようとしています。
さて、今回は、インフラはインフラでも「交通インフラ」ではなく、コンピュータシステムを使用する上で重要な「ITインフラ」についてお話したいと思います。特にジャカルタおよび日本企業が多く集まる周辺の工業団地の状況についてです。
まずは身近な話題から。
ジャカルタには想像以上に巨大ショッピングモールが沢山あります。また、おしゃれなレストランやカフェも軒をつらね、皆様ご存知のスタバと呼ばれる世界カフェチェーンも日本並み?にいたるところで見られるようになりました。そして、それらの場所ではなんと無料Wi-Fiサービスが当たり前になっています。店員からパスワードを教えてもらうだけで即時に繋がります。
日本からの短期出張者にとっては、これが大変重宝です。日本から持ち込んだノートパソコンを市中のカフェで開きメールチェックや資料の微調整などをしながら次のアポイントへの準備をする。そんな光景があちらこちらで見られます。
日本と変わらない、いや、無料で手軽に繋がるので、事前契約が必要な日本よりWi-Fiインターネットが身近で使用しやすい環境と言っていいかもしれません。
では、会社業務での使用という観点ではどうでしょうか。
多くの会社では、日本と同様にサービスプロバイダーと契約し、インターネットを使っています。国有の通信キャリアー系列や私有の独立系プロバイダー会社が大小合わせると約10社あります。ADSLおよび光ファイバー、ケーブルTVを基盤とした接続が選択肢としてありますが、日本のように最大1GBのような超高速ネットワークまでは未だ提供できていません。
光ファイバーの接続サービスで2MB、月額約1万円。20MBで月額約7万円といったところが相場で、現在の日本に比較するとコストはちょっと高めであり、15年前の日本といった感覚ですが、使用感としては十分に使用に耐えうるものです。
筆者の会社では、実際にADSLサービスを2MB、月額約7千円で契約して使用しています。日本の取引先との交渉やシステム会社との要件定義などで頻繁にSkypeと呼ばれるインターネット上のコミュニケーションソフトを使用し、映像、音声を使ってのミーティングをしています。時々時間帯によってはネットワークが混んでいて、「ビジー状態になっています。」のメッセージが出てしまいますが、その時は、映像を消して音声だけにする設定にすれば支障なく会話ができるようになります。Skypeの中での資料の送受信や画面の共有も可能ですし、場合によっては「Cacoo」というコラボレーションツールを使ってホワイトボードを共有することにより、日本とインドネシアと6,000kmの距離を感じさせない打ち合わせが出来ています。
2年前まではプロバイダー側のシステム的な不具合により時々インターネット接続が出来ないトラブルもありましたが、不具合が解消されたのでしょう、昨年以来トラブルらしいトラブルもなくダウンタイムはほとんどありません。
実はネットワーク含むITインフラのトラブルというよりは、電源トラブルの方が頻度高く発生しているのが実情です。国営会社PLNが電気を供給してくれますが、なかなかそのサービスレベル維持が万全とはいかないようです。その地域にもよりますが、2ヶ月に一度くらいは停電があります。また、雨季の季節には雷も多くなりますが、雷のたびに停電になった時期がありました。
停電時にはパソコン内のデータが心配になりますが、パソコン一台一台に無停電装置をつけているかというとそこまで準備している会社もそれほど多くないと思われますので、その点に注意が必要です。
工業団地のITインフラについて言えば、プロバイダー会社としてもビジネス的に力を入れているらしく、点在する団地に向けてピンポイントで基幹光ファイバーの敷設を完了しています。団地テナントの各々の契約をベースに基幹ポイントからテナントの場所への物理的な敷設をするので、初期敷設期間が必要な場合があるようですが、それを受容すれば快適なインターネット接続を享受できていると聞いています。
電源については、工業団地ではむしろより高度に考慮されています。生産工場ですから停電で機械が止まり生産活動できないということが無いようにしなければなりません。工業団地側でも電源供給の二重化を図っていたり、会社自身が自家発電施設を備えている場合もあり、電源トラブルによるITシステムへの被害はジャカルタ市内より少ないのかもしれません。
インドネシアを含む新興国で『Cloudia』のようなクラウド型の会計ソフトを検討する場合、インターネットを前提としたシステムであるので、「ITインフラ」については関心のあるところではないでしょうか。
でも、心配はご無用。むしろIT社会の恩恵をより多く享受できる素地があります。
会計データは本来、数字データであり、そのデータボリュームは映像や音声から比べれば非常に小さいものでありますからネットワーク容量を問題視する必要はありません。
また、ダウンタイムも極少になっていることから問題になることはないでしょう。
その観点よりもむしろ、データがアップロードされれば、クラウド上の堅牢なデータベースにデータが保持されているので、停電でパソコンに障害が起こってもデータ破損、消失の心配がないことは重要なポイントです。
また、種々のコミュニケーションツールにより、リモートサポートが容易に得られるようになりました。
まずは、現地法人と日本の本社との協働が容易になります。会計処理に関する課題が浮上した場合、日本の会計担当と現地法人の会計担当がクラウド上の同じデータを同じ画面で見ながら会話することができます。通常、遠隔だとどのデータの何がおかしいのかを説明することさえ理解してもらうことが難しいのですが、一つのデータを日本とインドネシアと同時に見ながら相談できるのは大きな収穫です。それで容易に分かり合えて課題の解決がより早く正確に実行されるのです。
更に、会計アプリケーション上の難しいトラブルに見舞われた場合、現地のサポート会社が一次対応しますが、それでは対処できない複雑な課題が浮上した場合でも、日本の開発元がサーバー内のデータを日本から照会できますので、そのサポートが非常に容易にスピーディーに受けられるようになります。地場の会計システムを使用した場合によくあるローカルのテクニカルスタッフの来社を何日も待つ必要がなくなるということです。
筆者はこのIT革命真っ最中と言われている現代に生まれて幸せだと思っています。ぜひ、インドネシア含む新興国の「ITインフラ」とクラウド型のアプリケーションを信頼して、それらが提供するメリットを最大限に享受して、みな各々が最高のパフォーマンスをあげられるようにしたいものです。
小池雄一(こいけゆういち)
学習院大学卒業後、日本アイビーエム株式会社入社。IBM社内向け会計システムのSEを経て法人営業部へ異動、SE経験を持つ営業マンとして法人顧客に対しソリューション営業を展開する。その後、人材物流総合サービス会社の初代ジャカルタ駐在員事務所長としてインドネシアに赴任。ビジネス開発を推進し現地法人化する。自身は代表取締役となり、設立から事業開拓、運営、会社閉鎖(親会社の合併のため)と、会社の一生を6年間の駐在期間で経験する。帰国後、親会社合併統合システムの構築を指揮し軌道に乗せた後独立し、あたためていたビジネスプランを実現すべく再度インドネシアへ渡航。当地での就労ビザ取得代行専門会社の経営をはじめ、会計業務など各種業務課題に対して、ITと手作業を最適に組み合わせて日本企業が海外グループ全体を統括できる仕組みづくりを提案し実現するソリューション事業を展開中。